2026年6月第5週のApp Storeセールスランキングでは、対照的な2つの運営設計が浮かび上がった。
一方は「復刻でつなぐ運営」。『雀魂 -じゃんたま-』の「アカギ」コラボ復刻+オフライン大会、『#コンパス【戦闘摂理解析システム】』の「復刻コラボ祭」、『呪術廻戦 ファントムパレード』の2.5周年第5弾「五条悟」復刻ガチャ、『崩壊:スターレイル』の「キュレネ」「ファイノン」復刻ガチャなど、既存IPコンテンツを起点にユーザーを再獲得しながら、次の施策へ橋渡しする設計が目立った。
もう一方は「ファンと共に運営する共創設計」。『トリッカル・もちもちほっペ大作戦』は二次創作収益化制限を緩和し、ゲーム配信大会を開催するなど「自走支援型」の姿勢を打ち出した。
本記事ではTOP50のランクアップタイトルを整理しつつ、「復刻でつなぐ運営」と「ファンと共に運営する共創設計」という2つの軸を切り口に今週の動きを読み解いていく。特に後者の「共創設計」については、研究所メモで深く掘り下げていきたい。
今週のセルラン 3行まとめ
- 『雀魂』『#コンパス』『ファンパレ』『スターレイル』が“復刻”を起点にユーザー訴求を強化
- 『トリッカル』が二次創作収益化制限を緩和し、ゲーム配信大会を開催
- 「運営→ユーザー」の一方向的な関係から、「運営↔ユーザー」の双方向・共創的な関係へ
今週のランキングTOP50
※データ元:App Store セールスランキング
※集計期間:2026年6月23日(火)〜6月29日(月)
※前日売上を反映しており実質、6月22日(月)〜6月28日(日)
| Rank | 前週比 | Title | Publisher |
|---|---|---|---|
| 1 | +2 | eFootball™ | KONAMI |
| 2 | ±0 | ホワイトアウト・サバイバル | Century Games Pte. Ltd. |
| 3 | +6 | パズル&ドラゴンズ | GungHo Online Entertainment, Inc. |
| 4 | -3 | モンスターストライク | XFLAG, Inc. |
| 5 | ±0 | ラストウォー:サバイバル | FUNFLY PTE. LTD. |
| 6 | +2 | ゴシップハーバー:マージ & ストーリー | Microfun Limited |
| 7 | -1 | ロイヤルマッチ(Royal Match) | Dream Games |
| 8 | +2 | キングショット | Century Games Pte. Ltd. |
| 9 | -5 | イナズマイレブン クロス | Level-5 Inc. |
| 10 | +4 | パズル&サバイバル | BUILDING-BLOCKS NETWORK TECHNOLOGY CO.,LIMITED |
| 11 | -4 | プロ野球スピリッツA | KONAMI |
| 12 | -1 | トゥーンブラスト | Peak Games |
| 13 | +2 | Pokémon GO | Niantic, Inc. |
| 14 | +10 | Disney Solitaire ディズニー ソリティア | SuperPlay |
| 15 | +1 | ガーデンスケイプ (Gardenscapes) | Playrix |
| 16 | +11 | 雀魂 -じゃんたま- | Yostar, Inc. |
| 17 | +20 | ドラゴンクエストウォーク 歩く楽しみが増える位置情報ゲーム | SQUARE ENIX |
| 18 | +86 | #コンパス【戦闘摂理解析システム】 | NHN PlayArt 株式会社 |
| 19 | +10 | 呪術廻戦 ファントムパレード | Sumzap Inc. |
| 20 | +10 | グルメ・ジャーニー | Century Games Pte. Ltd. |
| 21 | ±0 | ブロスタ | Supercell |
| 22 | +23 | 崩壊:スターレイル | COGNOSPHERE PTE. LTD. |
| 23 | +35 | 七つの大罪 光と闇の交戦 : グラクロ | Netmarble Corporation |
| 24 | -11 | ウマ娘 プリティーダービー | Cygames, Inc. |
| 25 | -6 | ドラゴンボール レジェンズ | Bandai Namco Entertainment Inc. |
| 26 | +5 | ONE PIECE バウンティラッシュ – アクションゲーム | Bandai Namco Entertainment Inc. |
| 27 | -2 | ラストZ:サバイバルシューティング | Omnilojo Pte Ltd |
| 28 | -16 | Pokémon Champions | The Pokemon Company |
| 29 | -11 | LINE ポコポコ:3マッチパズルゲーム | LINE Corporation |
| 30 | +2 | タウンシップ (Township) | Playrix |
| 31 | -14 | Pokémon TCG Pocket | The Pokemon Company |
| 32 | +9 | ホームスケイプ (Homescapes) | Playrix |
| 33 | +53 | ブルーアーカイブ | Yostar, Inc. |
| 34 | +4 | LINE:ディズニー ツムツム | LINE Corporation |
| 35 | +8 | ドラゴンクエストスマッシュグロウ ドラクエローグライトRPG | SQUARE ENIX |
| 36 | +15 | トリッカル・もちもちほっペ大作戦 | BILIBILI HK LIMITED |
| 37 | -14 | あんさんぶるスターズ!!Music | Happy Elements K.K |
| 38 | -2 | 勝利の女神:NIKKE | Level Infinite |
| 39 | +32 | eFootball™ウイコレ CHAMPION SQUADS | KONAMI |
| 40 | -20 | 荒野行動-スマホ版バトロワ | NetEase Games |
| 41 | -13 | 信長の野望 真戦 | Qookka Games |
| 42 | ±0 | Shadowverse: Worlds Beyond | Cygames, Inc. |
| 43 | +6 | ロイヤルキングダム (Royal Kingdom) | Dream Games |
| 44 | -10 | グランブルーファンタジー | Cygames, Inc. |
| 45 | -5 | キングダム 覇道 | Bandai Namco Entertainment Inc. |
| 46 | -2 | 信長の野望 覇道 | KOEI TECMO GAMES CO., LTD. |
| 47 | +6 | 学園アイドルマスター | Bandai Namco Entertainment Inc. |
| 48 | -1 | 原神~空月の歌~ | COGNOSPHERE PTE. LTD. |
| 49 | +19 | トップヒーローズ: キングダムサーガ | River Game HK Limited |
| 50 | +7 | NTE: Neverness to Everness | N2E ENTERTAINMENT PTE. LTD. |
ピックアップタイトル
※TOP10タイトルおよび、前日比+10以上タイトルのゲーム内イベント/プロモーションを中心に紹介
1位(+2):『eFootball™』
「ワールドカップ」関連施策の継続によるランクアップ。
6月22日には2018年ロシアW杯モチーフのガチャ「Epic: National Stars 2018」(コンパニ/ヴァラン/ベナティア)、6月25日には2002年日韓W杯モチーフのガチャ「Big Time & Epic: Brazil 2002」(ロナウジーニョ/カカ/カフー)を開催。並行して「Player of the Day(POTD)」も継続展開され、W杯期間中の選手活躍を翌日にゲームへ実装する設計が続いている。
6月25日からは「The Football Festival Campaign」も後半フェーズに入り、ログインボーナス&ミッションが更新。6月29日には、公式Xで日本vsブラジル戦を控えたカルーセル形式のポストを公開し、決戦に向けてユーザーのエンゲージメントと一体感を高める試みも見られた。
こうした多角的な施策展開が、W杯シーズンの安定首位を支えている。
3位(+6):『パズル&ドラゴンズ』
劇場版『魔法少女まどか☆マギカ』コラボによるランクアップ。
6月24日には、6月26日開始予定のコラボを事前告知。あわせて「夏直前スペシャルセット」をはじめとした有償通貨を含むパッケージアイテムセールを開催することで、コラボ本番に向けた通貨購入を後押しした。
6月26日からのコラボイベント本番では「スーパーゴッドフェス」に「アルティメットまどか&悪魔ほむら」「キュゥべえ」などが登場。アニメテーマソング「コネクト」「Magia」が獲得できるコラボ記念パッケージアイテムも販売され、動画視聴ガチャにもコラボキャラを追加。幅広いユーザー層への訴求が同時に展開された。
「事前告知→有償通貨補充→本番開始」の展開は、コラボ開始時の単発売上ではなく、開催前から段階的に期待感と課金意欲を積み上げていく長期運営らしい設計といえる。
16位(+11):『雀魂 -じゃんたま-』
6月17日から開催されている『アカギ』コラボ復刻と、関連ユーザー大会によるランクアップ。
6月27日には、コラボ連動のユーザー大会「鷲巣麻雀決斗戦」の決勝が渋谷で開催され、コミュニティ熱量がさらに引き上げられた。復刻イベントを”アプリ内単発”で終わらせず、オフラインへと接続していく長期運用の設計が支えている。
なお同時期には、麻雀漫画『ごきげんよう、一局いかが?』のアニメ化発表にあわせてコラボ漫画も公開。次なるゲーム内コラボへの期待感を抱かせる展開となり、”IPコラボの継続活用”に長けたタイトルらしい訴求が見られた。
17位(+20):『ドラゴンクエストウォーク』
『ドラゴンクエストXI』コラボ第5章開放にあわせたピックアップガチャによるランクアップ。
6月25日には『ドラクエXI』コラボイベント第5章を公開し、ガチャ「天才魔法使いベロニカ装備ふくびき」を同時開催。ドット絵表現を採用した新ミッション「冒険の書の祭壇」の追加、フォロー&リポストキャンペーンの実施も加え、「コラボコンテンツ+課金訴求+SNS拡散」を同日投入した。
さらに、7月開始予定の「吉野家」コラボにあわせてPVを公開し、位置ゲームらしい“リアル世界との連動”にも力を入れている。「既存IP拡張+リアル連動」の複層展開が運営の引き出しの厚みを感じさせる構成となっている。
18位(+86):『#コンパス【戦闘摂理解析システム】』
「復刻コラボ祭」における復刻コラボ連続開催による大幅ランクアップ。
6月22日には第1弾「メイドインアビス」コラボ、6月25日には第2弾「幼女戦記」、6月28日には第3弾「オーバーロード」と、1週間で3連続のコラボイベントを開催。6月24日にはVTuber「猫宮ひなた」さんが本タイトルの生配信を実施し、ゲーム内に登場する同名キャラの上方修正について取り上げた。各弾で異なるファン層への訴求が並走する構成となっている。
さらに今後は「このすば」「殺戮の天使」との復刻コラボが順次開催予定。例年通りであれば復刻フェーズ後には新規大型イベントが控えており、“復刻でユーザー呼び戻し→新規で本命施策展開”という2段構成がセールスを支えている。
19位(+10):『呪術廻戦 ファントムパレード』
2.5周年第5弾「五条悟」復刻ピックアップガチャによるランクアップ。
6月25日には本復刻ガチャを開催。あわせてWebショップキャンペーン、レイドイベント「共祓戦 -VS魔虚羅-」も同時実施され、周年記念を「第5弾」まで細かく刻むことで長期的な訴求を維持した。
さらに6月29日には、翌6月30日登場の新SSR「伊地知潔高」予告PVを公開。「Google」ならぬ架空検索エンジン「Juujuju」の演出でキャラの世界観を深掘りし、ファン層への訴求も強化した。
復刻イベントによる既存コンテンツの収益最大化と、PV公開による次イベントへの期待感の橋渡しを両建てで進める設計が、堅実なランクアップを支えている。
22位(+23):『崩壊:スターレイル』
最新アップデートVer.4.3後半の配信+復刻PUガチャによるランクアップ。
6月24日にはアップデートVer.4.3後半が配信され、あわせて「キュレネ」「ファイノン」復刻ガチャを開催。シミュレーション系のミニゲームイベント「初ランド」も同時実装。
既に最新アップデートVer.4.4「汽笛は轟く、帰寂のさなかに」が予告されており、今回の「復刻ガチャ」中心の構成は次回への橋渡し役として機能。新規キャラを引きそびれた既存ユーザーへの再獲得機会の提供と、ミニゲームによる息抜きコンテンツの両立を狙う設計といえる。
23位(+35):『七つの大罪 光と闇の交戦:グラクロ』
週刊少年マガジン連載中の人気漫画『ガチアクタ』コラボによるランクアップ。
6月25日には本コラボイベントを開催。コラボガチャでは「ルド」「エンジン」「ザンカ」「リヨウ」が登場。あわせて、スクリーンショット&フレンドコード投稿キャンペーン、ステップアップ式フォロー&リポストキャンペーンが同時実施された。
「ステップアップ式」のSNSキャンペーンは、拡散量に応じて報酬が段階的に増える仕組みで、6月18日の『シャドバWB』、6月25日の『ウイコレ』でも採用されており、業界標準の施策として広がりつつある。
33位(+53):『ブルーアーカイブ』
夏商戦本番に向けた「水着イベント」&「恒常水着PUガチャ」による大幅ランクアップ。
6月24日には水着イベント「嵐過天晴」を開催。あわせてピックアップガチャに水着衣装の「キサキ」「シュン」が登場。同時に新規/復帰ユーザー向けセレクトPUガチャ、キャラソン3曲公開も実施した。
今回の「キサキ」「シュン」はいずれも「恒常」水着キャラとして登場しており、過去の流れであれば、7月中旬には「限定」水着キャラの投入が予想される。「恒常水着→限定水着」という設計は、夏商戦の話題性と売上ピークを長期化させる手法として注目される。
6月20日の『ヘブンバーンズレッド』「Early Summer」キャンペーン、6月24日の『パズドラ』「夏直前スペシャルセット」と並び、業界全体が夏商戦本番に向けた助走期間に入っているといえそうだ。
36位(+15):『トリッカル・もちもちほっペ大作戦』
イベント「いつか再び訪れたタイミング」後半にあわせたピックアップガチャによるランクアップ。
6月25日からのピックアップガチャでは、キャラ「【黒い魔弾の射手】シオン」「【スベりの権威】リム」が登場。あわせてイベント「異世界ピクセル」も開催した。
さらに、「二次創作収益化制限」の緩和と、「ゲーム配信大会」の開催も実施。ゲーム内施策に加え、二次創作・配信文化を支えるインフラ整備によって、ファンコミュニティ主導のIP拡張を後押しした。
39位(+32):『eFootball™ ウイコレ CHAMPION SQUADS』
ワールドカップ連動のフェス限ガチャと著名人起用キャンペーンによるランクアップ。
6月25日にはフェス限定ガチャ「National Heroes FESTIVAL」を開催し、「ロナウジーニョ」「本田圭佑(直筆サイン入り)」が登場。あわせて、ステップアップ式フォロー&リポストキャンペーンを実施し、稲本潤一さん、有田哲平さん、山崎弘也さん出演動画も公開した。
「OB選手+お笑い芸人」を組み合わせたキャスティングで、サッカーファン以外への接触経路も用意している。『eFootball™』と並ぶ横断展開の典型例といえる。
研究所メモ
『トリッカル』『学マス』に見る、”運営↔ファン”双方向設計の兆し
リード文でも触れた通り、今週特に興味深かった運営設計の一つが「ファンと共に運営する共創設計」というアプローチだった。今回は『トリッカル・もちもちほっペ大作戦』の取り組みと、業界の他事例として『学園アイドルマスター』を組み合わせて、この潮流の輪郭を見ていきたい。
『トリッカル』の「自走支援型」アプローチ
今週ランクインした『トリッカル』は、今回の調査期間中、2つの”ファンコミュニティ支援施策”を打ち出した。
1つ目は「二次創作収益化制限」の緩和。これまで規制されていたファンによる二次創作の商業利用について、より柔軟な運用を認めた。ファンが自身の作品を収益化できる範囲を広げることで、二次創作の熱量を維持・拡大する狙いと見られる。
2つ目は「トリッカル 時空を越えた配信大会」の開催。ユーザーによるゲーム配信を運営が公式に支援・可視化する取り組みだ。
いずれも「ファンが自走できる環境」を運営自ら整える「自走支援型」アプローチで、ゲーム内のガチャやイベントとは別軸の“外堀”を固める設計といえる。成熟期を迎えたスマホゲーム運営市場で、こうした草の根的なファンコミュニティ支援を運営自ら推進する事例はまだ珍しく、今後の成功事例として注目されそうだ。
『学マス』の「ファン共演型」アプローチ
今回のWeeklyセルラン調査範囲外だが、類似の潮流を示す事例として『学マス』の取り組みも触れておきたい。
『学マス』では、キャラの誕生日を迎えるにあたって、ファンからのお祝いコメントを事前に募集し、当日の公式配信で紹介するという「ファン共演型」施策を展開している。この6〜7月にかけて複数キャラの誕生日で採用されており、単発ではなく『学マス』側の運営フォーマットとして定着しつつある印象だ。
例えば「月村手毬」の生誕記念配信では、公式YouTubeチャンネル登録者数約52万人に対して、42万再生を記録。登録者の8割以上が視聴した計算になり、通常の「イベント告知動画」と比較しても極めて高い数値といえる。
「事前のコメント募集→当日配信で紹介」という設計は、「もしかして自分のコメントが読まれるかもしれない」というファンの期待感と参加意欲を同時に高める構造となっており、『トリッカル』とは異なる方向性を示している。
こうした「事前募集→当日発表」の「ファン共演型」アプローチは、今後業界の他タイトルにも波及していく可能性がありそうだ。
業界視点:「運営↔ファン」の双方向設計へ
『トリッカル』(自走支援型)と『学マス』(ファン共演型)は、アプローチこそ異なるものの、いずれも“運営とファンの境界を意図的に曖昧にする”という共通点を持つ。従来の「運営→ユーザー」の一方向的な関係から、「運営↔ユーザー」の双方向・共創的な関係への進化と捉えることができそうだ。
筆者としては、スマホゲームのマーケティング理論には「AISAS(認知→興味→検索→行動→共有)」というフレームが最もしっくりくると感じている。そこに昨今のスマホゲームトレンドを加味し、「熱狂」というステップを加えた「認知→興味→検索→行動→熱狂→共有→認知」というサイクルを本ブログでは提唱したい。
キタヤン式マーケティングサイクル:AISASに「熱狂」を加えた7段階の循環モデル
この視点で見ると、特に「熱狂→共有→認知」の循環をどう運営自身が設計するかは、業界にとって新しい宿題の一つといえそうだ。『トリッカル』と『学マス』の取り組みは、これに対する2つの異なる回答例といえるかもしれない。
成熟期のスマホゲーム市場で次の成長曲線を描くのは、“ゲーム内施策を極める”ことに加え、“ファンとの共創空間をどう設計するか”にかかっているといえそうだ。